令和7(2025)年度第2回(通算42回)教点連セミナー報告
| 日時 | 令和7(2025)年12月13日(土)13時30分~15時30分 |
|---|---|
| 方式 | オンライン(Zoom) |
| テーマ | 文部科学省著作 小・中学部点字教科書「算数」「数学」の編集について |
| 講師 | 清和 嘉子 氏(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭) |
2025年12月13日(土)の午後、今年度第2回セミナーをオンラインで開催し、73名の方が参加されました。
講師に清和嘉子(せいわよしこ)氏(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭)をお招きし、「文部科学省著作 小・中学部点字教科書「算数」「数学」の編集について」というテーマでお話しいただきました。
まず、編集の基本方針を説明されました。
- 原典教科書の内容そのものの大幅な変更は行わない。
- 内容を変更したり、差し替えたりする場合には、必要最小限にとどめる。
- 図、表、写真等の取扱いは慎重に行い、点図化や文章化するなど、できる限り原典教科書に沿った点訳ができるように工夫する。特に図については、その図で理解すべき内容を見極めてデフォルメする。
- できるだけ児童生徒が自分で読んで理解できるようにする。
次に視覚と触覚による違いをわかりやすくご説明いただきました。
| 視覚 | 多くの情報に受動的にアクセスできる。全体像を一度に把握できる。物が動いている様子なども見ることができる。2つ以上の物を同時に認識できる。細かい物や複雑な図を判別できる。多くの中から一つを探すことが比較的容易。全体像を短時間でとらえられる。 |
|---|---|
| 触覚 | 必要な情報に能動的にアクセスしなければならない。部分をつないで全体像を確認する。動く前と後は触れるが、途中を触ることはできない。2つ以上の物を同時に認識することは非常に難しい。細かい物や複雑な図の判別は難しい。多くの中から一つを探すことは難しい。部分をつないで全体をとらえる。時間がかかる。 |
更に具体的な編集例を挙げていただきました。
- 筆算は珠算が最良
- 珠算は、視覚の代わりに触覚を用いて学習できるよう、指で計算の過程を意識しながら、かつ、基本的に一ヵ所に集中しながら計算できる。筆算扱いになっている練習問題は横式に変更。計算方法では上位の桁から展開する方法に翻案して示すこととした。
- 〇△□
- 求めたいものが□で表されている場合、□を(フ)、それ以外の( )などを空欄記号とした。また、一つの問題の中に、□や( )が複数出てくる場合には、□は(フ)(ム)(マ)と し、( ) は(ア)(イ)(ウ)とした。
- 課題の変更
- 「見て」→「調べて」、「下の」→「次の」、「書き入れる」「書き込む」→「書く」「考える」、「書きましょう」→「答えましょう」に変更。
- ものさしなどの目盛りの表示については、原典の表し方にかかわらずその単位を5mm以上となるようにした。時計については5分刻みの目盛りを原則とした。
- 図
- 図はできる限り凸図化した。凸図化が困難であるものや文章による表現で十分と思われるものについては削除し、説明に変えた。
- 2次元的に表現された図表等を掲載する場合は、何を読み取るのかを図表の前に文章により明確に説明した上で、図表等を提示。
- 凡例を極力避ける。一つの単元内で共通して用いられるものは、単元のはじめ、または、初出の箇所に凡例を示した。
- 図の中の文字の位置は、図の認識を妨げないように考慮。
- 図形の中で長さが等しいことを表すマークは、線分を横断させず、片側のみ。平行を表す記号や矢印などは別の表現に置き換える。 時計やはかりで範囲を表す際には、矢印は用いず二重線で表した。
- 二つの図形が接している図は、共有点を作らず、二重線で表現した。
- 各図形への番号の付加や、向きや並び方、位置の調整を行った。
- 動物の絵はできるだけシンプルな図形で表現し、数えやすいような配置にした。
- 下から上に貼るシールは、左から右にシールを貼るように変更した。
- グラフ
- グラフの方眼は裏点を原則としリード線などは裏点または弱い点とした。
- 方眼の数を数える必要がある図は、原則、1メモリが1.5㎝ 程度となるようにした。
- 棒グラフでは棒の中にもメモリ線をいれた。棒の太さはグラフによるが、1本の棒の左右の線を同時に認識できるようにした。
- 棒グラフの縦軸は、メモリに2点分の印をつけることで数えやすくした。
- ヒストグラムは、隣り合う棒の境目は共有させずに二重線とした。
- テープ図・面積図・数直線図
- 基準を先に確認できるよう、基準線を上、比較するものを下に描くことにした。 また、各学習の最初に掲載されている数直線図は図と表の両方を示し、それ以降は表のみとした。
- 立体図形の表現
- 見取り図は原則として削除し、目的に合わせて、投影図(第3三角法)、平面図、立面図、断面図、展開図、言葉による説明に置き換えた。投影図法では、「上から見た図」の下に「正面から見た図」をおくことを原則とした。「横からみた図」を入れる場合もある。
- 空間図形の高さや、線分の途中に様々な情報が含まれている線分の長さを表す場合には、該当箇所から少し離して点線を表し、その外に数値を入れた。
- 投影図を触る際に、上から見た図と正面から見た図の対応を捉えやすいよう、2つの図の間に文字が入らないよう、第4学年以降では、図の中の「上から見た図」を「上から」、「正面から見た図」を「正面から」に略した。
- 投影図から立体そのものをイメージすることは難しいため、課題に合わせた立体図形を準備することが望まれる。
この後、質疑応答が行われました。
- 近年の教科書は図が多いためか巻数も増えて持ち運びも大変だが図を減らすのは難しいか → 減らしきれない面もあるので、巻数が増えても1冊があまり分厚くならないようにする。
- グラフのX軸Y軸は、書く位置に決まりがあるか → 基本はX軸Y軸をたどっていってその延長にX、Yを書く。
清和先生には触図もご用意いただき、お話も具体的な例が盛りだくさんで、大変参考になりました。
先生、ありがとうございました。