特定非営利活動法人 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会

2024年度第2回(通算39回)教点連セミナー報告

テーマ 「視覚障害児童・生徒の点字習得と指導方法について(「点字学習指導の手引き」より)
日時 2024年11月30日(土)10:00~12:00
場所 オンライン(Zoom)
講師 坂井仁美氏(全国高等学校長協会 点訳入試事業部)
参加者 50名

2024年6年11月30日(土)10時より、今年度第2回セミナーをオンライン方式で開催しました。50名の方が参加されました。

講師に坂井仁美(さかい ひとみ)氏(全国高等学校長協会入試点訳事業部)をお招きし、「児童・生徒の点字習得と指導方法について ~『点字学習指導の手引(令和5年改訂版)』から」というテーマで、坂井氏が執筆をご担当した同書第4章・5章・8章・10章を中心にお話しいただきました。

今回の『点字学習指導の手引』は平成15年改訂版の改訂新版として作成されました。近年、点字使用の児童生徒数減少により、これまでのように各盲学校で点字学習指導の方法や工夫などを継承することが難しくなっています。このような状況を受けて、令和5年改訂版では、指導法や工夫がより具体的に詳細に記載されています。

セミナーでは、点字の読み書きの学習(4章・5章)から教科学習(8章)に至るまで、点字教科書を使用している児童生徒がどのような学習をしているのか、「手引」の記述に沿って、重要なポイントや改正点、こめられた思い、実際の指導場面や「手引」の編集にまつわるエピソードも交えてお話しいただきました。

第4章 触読の学習の実際。まず、このタイトルにも坂井氏の点字指導への思いがこめられています。点字の「読み書き」の学習を扱う4章と5章。5章の「書き」の学習に対して、4章は「読み」の学習ですが、「読み」ではなく、あえて「触読」という言葉を選ばれたとのこと。まずもって点字は指で触れて読む文字であり、触読ということを常に意識するようにという思いが前面に押し出された章題となっています。

触読性を大切にした一例として「両手読みの動作習得のための題材」のなかで、最初の線たどりの線をこれまでの「め(6点)」線から「れ(上4点)」や「ふ(上2点・下2点)」の線にしているということが紹介されました。児童にとっては点の多い「め」の線よりも指に当たる刺激の少ない「れ」の線、指の腹が落ちる「ふ」の線の方が負担が少なく、抵抗なくたどりやすいためです。さらに、触読への意識は、「右と左のどちらでしょう」という文言を、触読として自然な「左と右のどちらでしょう」に変更するといった、細やかな変更点などにもつながっています。

点字指導の過程には、これまで様々な工夫が考案されており、「手引」にも多様な工夫が記載されています。個々の児童生徒の性格や習熟度、様子を絶えず観察しながら提示することが大切です。例えば、二マスを一マスに見立てる方法があります。初学者にとっては点間が広くなり弁別しやすくなります。それをアルファベットが読めるようになった小学部の児童に提示したときのエピソードが紹介されました。「先生、『にゃえる』ってなんですか?」。提示したのは「4の点、13の点、56の点、123の点」の4マス。点間の離れた「くも」です。最初のうちは効果的な方法も、習熟度に合っていなれば逆効果になってしまいます。

内容については、同書のほか、墨字は文部科学省のホームページ、点字はサピエ図書館からもダウンロードできます。

最後に、会場からの質問に対して坂井氏の見解やアドバイスをいただきました。

1行空けと点訳挿入符の導入時期について

1行空けは行たどりがスムーズにできるようになれば早めにやめた方がよいという見解がまず示されました。両手の供応動作に支障をきたすこともあるためです。また、点訳挿入符については、中学生であれば問題なく、小学校3、4年生でも理解は可能。ただし、いずれも、子どもの習熟度によるため、時期は一概に言えないという留保がつけられました。なお、点字教科書(国語)における個々の符号や記号の導入時期については、「点字教科書編集資料」の「点字の初出一覧及び表記に関する学習事項」に掲載されています。

教科書や試験問題での行末処理について

叙述的な一般文章などでは、入るのに行を落とすことはしなくてもよいが、教科書では初出の複合語、一刻を争う試験問題などでは複合語や連体詞など、行を落とすことで意味をとりやすくするために、そのような処理が有効です。

多用される傾向にある○や△などの伏字について

書き分けは必要に応じて行うことに加え、伏字が多く並んでいると触読的には読みにくいので、数が多い場合はまずは数を減らすというアドバイスをいただきました。会場からは初期段階では伏字を言葉に置き換える等の方法も紹介されました。

教員の点字指導へのモチベーションの保ち方について:点字使用児童の減少に伴って実践の場がなくなると、点字へのモチベーションが保たれにくくなるという現状があるかもしれません。学校によって状況は様々だとした上で、坂井氏は、短いダジャレ話などを書き、担任の先生を通して子どもたちに渡してもらったことを紹介されました。渡された子どもたちが先生の目の前で点字を読んで楽しそうに笑う、先生方にも興味深くかかわっていただけるような工夫の一例でした。

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