特定非営利活動法人 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会

2024年度第1回(通算38回)教点連セミナー報告

テーマ 文部科学省著作 小・中学部点字教科書「理科」の編集について
日時 2024年6月1日(土)13:30~16:30
開催方法 会場とオンラインのハイブリッド方式
会場開催場所 新宿リサイクル活動センター A・B会議室
東京都新宿区高田馬場4-10-2 TEL:03-5330-5374
JR山手線、西武新宿線、東京メトロ東西線
「高田馬場駅」西側、徒歩3分
講師 柴田直人氏(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭)
主催 特定非営利活動法人 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会
参加者 会場13名、オンライン51名

2024年6月1日(土)の午後、今年度第1回セミナーを東京新宿リサイクル活動センターで、会場参加とオンラインのハイブリッド方式で開催しました。会場には13名、オンラインは51名の方が参加されました。

講師に柴田直人(しばた なおと)氏(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭)をお招きし、「文部科学省著作 小・中学部点字教科書「理科」の編集について」というテーマでお話しいただきました。

まず、点字教科書で取り上げられている図を例に、それぞれの図の工夫個所を説明されました。

体内の血液の循環図をサーモフォームという特殊なビニール用紙に熱を加えて図を浮き上がらせているものや、星座の位置を表す図などを紹介。特に星座の図では、点訳し校正を経る段階で、どのように点図に手を加えたかをお話しされました。星と星とをつなぐ線を最初は裏線で描いていましたが、しっかり生徒たちに注目してもらうため、表の線に変更したそうです。生徒に何を一番に注目させたいか、教員が何を教えたいかを定めて、その部分が際立つ線の種類を決めたり、図中に書く文字の位置などにもこだわって編集されています。

また、視覚支援学校用の教科書では、点字使用の生徒たちが指で触って理解しやすい教科書を目指し、内容にも配慮されています。例えば、「太陽の影」、「太陽の光」という単元があった場合、原点教科書は影→光の順に掲載されていても、そもそも太陽の光を理解していなければ影を知ることが難しいため、点字教科書では順番を変えることもあるそうです。また色の明度や光の明るさ、方向を音で確認できる「感光器」を使った実験を紹介したり、音声で確認できる方位磁針などの実験器具を掲載するなど、内容の差し替え・アレンジをされています。

グラフの書き方では、棒グラフの棒の幅が広いと指で線を辿っているうちにどこを触っているのかわかりづらくなるため、細目の幅にしたことや、グラフ全体を囲む線は左と下の縦軸と横軸のみにして、上と右の線は裏線にするといった細やかな配慮点も教えてくださいました。

小中学部の教科書は、4年に一度改定されます。改訂年度の前年度の6月に元となる原点教科書が選定され、7~8月に点字教科書編集会議が開かれます。8~10月にかけて、編集に関わった委員で、「点字教科書編集資料」を作成し、その後点字出版所で点訳に取り掛かります。原点教科書は、点字で学ぶ生徒が理解しやすいか、弱視の生徒も見やすいレイアウトになっているかを考慮して選ばれます。しかし、近年、どの出版社の教科書もビジュアル化されており、どの教科書を選定するかは悩ましいところのようです。なお、「点字教科書編集資料は」は文部科学省のホームページからダウンロードすることができます。

最後に、柴田氏の話を受けて、参加者との質疑応答を行いました。副教材を視覚支援学校ではどのように用意しているかという質問については、これまで学校で使用してきた副教材があり、学習指導要領が変われば新たな問題に差し替え・追加するなどして活用している教材があることや、高校では校内の教材の点訳に協力してくださっているボランティアの方に依頼をしているそうです。

教科書の多様性にともない、各所に掲載されているQRコードの扱いをどうしているかという質問にたいして、小学校の理科に関しては補助的な内容ということから削除しているが、ただ、教科によっては役立つ情報もあり、その判断は極めて難しいと締めくくられました。

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