特定非営利活動法人 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会

2023年度第1回(通算第36回)セミナーのご報告

テーマ 「児童・生徒が理解しやすい点字教材を届けるために」
~『情報』の教科書から考える~
日時 2023年9月16日(土)13:30~16:30
場所 新宿リサイクル活動センター(東京都新宿区)
講師 山賀信行氏(NPO法人スラッシュ副理事長)
参加者 約30名

今回のセミナーでは「情報」の教科を取り上げました。「情報」の科目が2003年度に高校の必修科目となり、昨年度から「情報Ⅰ」として再スタートしたこと、小中学生にもタブレットが配布されるようになったことなどを踏まえての今回のテーマ設定です。

当日は、盲学校高等部で実際に使用されている「情報Ⅰ」の点字教科書を題材とし、情報分野の点字教科書製作のポイントを、山賀信行さんに分かりやすく説明していただきました。

講演の内容は、「情報処理点字」と「図の点訳」の大きく二つに分かれます。

まずは日本語6点情報処理点字の概要についてです。1981年に制定され、1995年以降大きな改訂がされておらず、成熟した点字体系であること、海外で使用されているNABCCコードとの関係、読みやすくするための自由な発想の大切さなどについて解説いただきました。

次に、「図の点訳」については、点図として表すのが良いのか、説明に置き換えるのか、省略するのか、実際の教科書の表現を取り上げながら考えを深めました。この問題はどの教科にも共通することではありますが、やはり、教科ごとの特徴が出るものです。

続いてはレイアウトの工夫です。大きなエクセルの表を分割したり見開きにしたりしてどのようにわかりやすく表現するのか、フローチャートやプログラムを書く際の工夫や注意事項についても確認しました。特に、フローチャートは、ことばを囲む枠の形が決まっており、その形を勝手に変えることはできないこと、プログラムについては1行になるべく多く書く工夫も必要であること、などについてと説明いただきました。

講演終了後の質疑応答では、情報処理関係の点訳に携わっておられる点訳者の方・点字ユーザーの方から活発な質問が出され、情報処理の点字表記の仕方や考え方、紙のサイズを大きくしてはどうかという提案、子どもたちが情報に関心を持つようにするための工夫などについて、話題が広がりました。

参加人数はコロナ前と比べて多くはありませんが、情報処理点字に関わっておられる皆様の熱い思いに触れることができ、改めて対面開催の良さを実感しました。

情報を取り巻く分野は日々刻々と変化しており、今後ますます情報リテラシーが重要になってくることが予想されます。視覚障害者が情報から取り残されることのないよう、必要な知識とスキルをしっかりと身に着けられる環境の整備が大切です。そうした意味合いからも、点字教科書が大きな役割を担うと考えられます。今後とも皆様、よろしくお願いいたします。

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